俺から逃げられると思うなよ
朝早く起きる。

今日も変わらず、朝ご飯とお弁当を用意する。

いつもと変わらない日課。


だけど、違うものがあるとしたら。

私の気持ちの変化。


誰のために、お弁当を作るのか、じゃなくて。

誰に『おいしい』と言って食べて欲しいか。


私は、久しぶりに晴れやかな気分でキッチンに立つ。

もう、受け取ってもらえなかったら。

なんて、恐れる必要はない。



「ふんふんふーん」



久しぶり鼻歌を歌っていると、階段から足音がする。

誰か起きてきたのかなーっ。

なんて、顔を上げると。

千秋くんが、嫌そうな目で私を見ていた。



「あ、千秋くん。おはよう」

「……なにその、テンション」



心底機嫌が悪そうな千秋くん。

そんな千秋くんにも、笑顔を向けられる。

心からの笑顔。
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