俺から逃げられると思うなよ
「……よく、作るよね」

「え?」

「食べない奴の分なんて、作らなければいいのに」



千秋くんがリビングを出て行こうとする。

その背中に、声をかける。



「今日のお弁当はチーズ春巻きだからねーっ」



黙って出て行く千秋くん。

千秋くんが“チーズ”に反応したの、分かったよ。

今日も、届けに行くから。

学校で待っていてね。




私は2人分のお弁当箱を、鞄に入れ家を出る。

今日はいつもより早く家を出た。

特に理由はない。

だけど、朝早くから全身で太陽の光を浴びるのは気持ちがいい。


そう思えたのは久しぶりだった。
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