俺から逃げられると思うなよ
「僕さ、中学生のとき付き合っていた元カノに言われた言葉が忘れられなくて」

「うん」

「元カノに『男でかわいいとか、男じゃない』って振られたんだよね」



千秋くんの言葉に、言葉が詰まる。



「そのとき、僕、チビで。それがコンプレックスだった」



コンプレックス……。

千秋くんのコンプレックスなんて、初めて聞いた。



「だから、牛乳ばかり飲んで身長伸ばそうとしたけど」



効果はなかったよ。

なんて苦笑している千秋くん。

話を聞いていて苦しくなる。



「今は、だいぶ身長伸びたけど。あのときのクセが抜けない」

「そっか」

「牛乳だけでお腹いっぱいになるからご飯もいらないし。栄養失調になったときもあった」




私は、思わず千秋くんの手を握っていた。

千秋くんも驚いた様子だったけど、私の手を振り払うことはなかった。
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