俺から逃げられると思うなよ
千秋くんから離れようとすると、抱きしめられていた腕がぱっと離されたので、勢いよく後ろに転んだ。

地面が芝生だったからいたくないけど、コンクリートじゃ危なかったな。

それぐらい、勢いがよかった。



「お弁当、たーべよ」



私を放置して、千秋くんはお弁当を手に取る。

バンダナを開いて、お弁当とご対面。



「……茜ちゃん」

「なにー?」



私も起き上がって、自分の分のお弁当を開ける。



「なんでタッパーなの」



今さら!?

と、思ったけど。

千秋くん、私のお弁当を食べたことなかったもんね。



「お弁当箱がどこさがしてもなかったんだよー」



私はタッパーのフタを開けて、食べ始める。

千秋くんは納得がいかない様子のまま、お弁当に手をつける。


1番最初に食べてくれたのは、やっぱり、チーズ春巻きだった。



「茜ちゃんー」

「ん?」

「今日の放課後。お弁当箱、買いに行こ?」



そんなかわいい顔して聞かれたら断れるわけがない。

私が頷くと、千秋くんは。



「放課後デートだねっ」



やっぱり、小悪魔でした。
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