俺から逃げられると思うなよ
放課後になったのですが。

そわそわして落ち着かない。



「……どうしたの」



不審に思ったのか、横の席の神崎くんに聞かれた。



「な、なんでもないよっ!」



誤魔化す私を、なにか言いたげな目で見てくる。

そんな私たちのそばに、涼も来て。



「ほら。帰んぞ」

「ん」



席を立つ神崎くん。

私は座ったまま動かない。



「穂村も行くぞ」



一緒に帰ろう、と誘ってくれるのは、とても嬉しいんだけど。


千秋くんと一緒に帰るから。


なんて言えないよ!


あたふたしていると、教室が一瞬騒がしくなったかと思えば。

後ろから温かいぬくもりに包まれる。


だ、だれ!?


びっくりしている私に答えを教えてくれたのは神崎くんで。



「千秋?」



ち、千秋くんでしたか!

千秋くんが私を抱きしめてくれているんですね。


切実にやめてもらいたいけど。

注目浴びてしまうんで。
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