俺から逃げられると思うなよ
「千秋?」



千秋くんを呼ぶ女の人の声が聞こえる。

思わず足を止める私たち。

振り返ると。



「あ、やっぱり! 千秋だ!」



美少女が手を振りながら駆け寄ってきた。

千秋くんを呼び捨てにする彼女は、一体誰なんだろう。



「沙耶……」



美少女に気がついた千秋くんは、彼女の名前を呼ぶ。


“さや”……?


呼び捨てにするってことは、仲良しなんだよね?


手を繋いだままの私たち。

いろいろと誤解されないようにと、千秋くんと手を離そうとするけれど。

逆に、握られた手に力がこもったのが分かる。



「ちあ、」

「千秋! かっこよくなったねっ!」



私の言葉をさえぎって、千秋くんの前に立つ美少女。

きれいな栗色の髪の毛に、ゆるふわの大人っぽい髪型。

彼女の着ている制服には見覚えがあって。


私……。

この人、見たことある気がする……。
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