俺から逃げられると思うなよ
「さっきの女の子。……隣町の高校の制服着ていたよね?」

「うん」



間違いない。

あの制服は。

私が今年の6月まで通っていた高校の制服だ。

彼女に見覚えがあったのも、校内のどこかですれ違っていたからだろう。


やだ。

思い出したくないことまで思い出してしまいそうだ。

千秋くんも、きっと同じような感情だろう。


消したいくらいの過去を、忘れていたはずなのに。

楽しかったはずなのに。

彼女の登場で、一瞬にしてフラッシュバックしてしまったんだろう。


その証拠に、千秋くんの表情がこわばっている。

見たことのない、千秋くんの表情。

傷ついたあの時を、嫌でも思い出してしまう。


そんな千秋くんに、今の私が出来ることは。
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