凌玖先輩から逃れられない
会長じゃなかったら、先輩でいいのかな?
「篠崎先輩?」
「……凌玖、と呼んでくれ」
「り、凌玖、先輩……?」
う、わ……こんなにも照れくさいんだ。
男性を下の名前で呼ぶのは久方ぶりだ。
「……っ」
「あの、凌玖先輩?」
どんな表情をしているのか気になって先輩の顔を覗き込むが、顔を背けるので一向に見えない。
「すまないが、少しの間見ないでくれ」
「先輩……?」
見ないでと言われたら余計見たくなるのが人間の性。
先輩の動きに自分も懸命についていく。
「おいっ、だから見るなと……っ」
その甲斐あってやっと見れた先輩の顔は、ほんのりと赤く染まっていた。