凌玖先輩から逃れられない
なんでこんなすごい人がわたしのこと好きなんだろう。
夢物語みたいだけど、事実なのだ。だって先輩の態度がそう言ってるのだから。
もう色眼鏡をつけているということにして大人しく観念するしかない。
そうでもしないと先輩の誠意に失礼だ。
「沙耶」
「先輩……!」
周りの人は先輩を認識すると、黄色い声をあげたり目の色が変わる。
「連絡をするのでもよかったんだが、会えたから伝えようと思ってな」
「真綾ちゃん、先行ってていいよ」
「はーい!ごゆっくり〜!」
先輩がファンに叱責してくれたその日から、目線は相変わらず痛いけど、何も言われることはなくなった。
おそらく先輩が根回ししてくれたのだろう……どこまでも非の打ちどころがない。
「友達か?」
「はい!優しくてとっても良い子で……!可愛いですよね!」
「そうか?沙耶より可愛いものなどないと思うが」
「……ストレートすぎます」
「事実だから仕方ないだろう」
だからって、そんなの常識だろというような感じで言わないで。