【短】きみとかえるのおしまい
きみとかえるの、



――キモチワルイ。





白みがかった茜色の光に反射して、ひどくきれいにシルエットが浮かぶ。


教室の扉のすきまから、わずかに光があふれてる。



なんで。



無意識に呼吸を止めていた。

ほんの数秒前に吸い込んだ酸素は、そのまま肺を圧迫してる。


今日の日直であるわたしがついさっき整頓させたばかりの机と椅子が、ふたつの影の伸びる奥の端っこのほうだけ少し乱れてる。



カーテンが揺れた。


梅雨明けのじめじめした微風が、ようやく離れた唇の間を通り抜けた。


ようやく。
いや、そうでもないかもしれない。

何秒くらいだっただろう。

わかんない。



もう、なんにもわかんないよ。



職員室まで日誌を届けに行って、ちょうど帰ってきたところで。


もうひとりの日直のケイちゃんと
わたしと一緒に帰りたがってたリョクくんが
わたしのことを待っていてくれてたはずで。



でも、あそこで見つめ合ってるのは

間違いなく、わたしの大切な親友とカレシ。



啼くのもためらうほどのこそばゆい空気。
キスをしたあとのとろけそうな表情。


全部、全部、わたしの蚊帳の外。



……ふしぎ。


悲しいとか、ムカつくとか。

そういった感情は沸き上がってこない。


ショックは受けたけれどそれ以上に……ただただ吐き気がした。


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