【短】きみとかえるのおしまい
この人の名前、なんだっけ。
隣のクラスだし、うちの学校の有名人なんだけど、ぱっと出てこない。
わたしもたいがい興味なかったしなあ。
えーっと……たしか……あ。
“ノブ”。
そうだ、ノブくんだ。
学年1かっこいいとか、話すとちょっと冷たいだとか
この間ケイちゃんが話して――た、んだよね。
ほんのつい最近、先週のこと。
ケイちゃんの好きな人。
そう、教えてくれた。
なのになんでリョクくんと……。
あぁまた、胃の中が爆発しそう。
気持ち悪い。何もかも。
「顔色悪いけどだいじょぶ?」
ノブくんの表情筋は動かないが、心配してくれてるらしい。
まさか。ちっとも。
だいじょばないからココに逃げてきたんだ。
「大丈夫。ありがと」
わたし、どんな顔してるんだろ。
笑えてる気がしないし、青色か赤色かもわからない。もしかしたら緑色かも。
ココには先約があったみたいだからちがう場所を探さないと。どこか落ち着ける場所。安らげる場所。いっそ保健室で休むべき?
「じゃましてごめんね」
立ち去ろうとしたら
「ここに用があったんじゃないの」
やけに近くから声がして振り向けば、すぐうしろにノブくんがいた。
「用終わったし、おれが出てく」
抑揚なく言いながらわたしの横を通り過ぎていく。
気をつかってくれたのだろうか。
全然冷たくないじゃん。
女子にさわがられるわけだ。