濃厚接触、したい
「抱き締めて、キスして、それから……」

僅かに目尻を下げ、うっすらと笑う袴田課長は酷く艶っぽい。
いつもは無表情のくせに、こんな顔をするなんて反則だ。
予想どおり、抱いてくださいと口走りそうになる。

「……なあ。
落ち着いたら小早川と、濃厚接触していいか」

くいっとまた、眼鏡を上げた袴田課長の前髪が、はらりと落ちる。

「えっ、その……」

眼鏡をただ上げるだけで、こんなにドキドキさせるものなんだろうか。
あの大きな手で触れられたら……そう考えて、身体の奥に熱が宿るのを感じた。

「考えておいて、くれな。
じゃあ」

ぷつっ、とそこで、通話は途切れた。
机の上に突っ伏し、あたまを抱える。

「あれいったい、なんなの!?」

心臓の鼓動はいつまでたっても落ち着かない。
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