濃厚接触、したい
あくまでも課長は冷静を装っているが、こっちとしてはもう、声が震えないか気を遣う。
唯一の救いは、課長には私の姿が見えないということだ。

またカメラを切らないまま、課長は席を外した。
すぐに犬と話す、課長の声が聞こえてくる。

「だーかーらー。
あとで散歩に連れていってやるから、おとなしく待っていなさい」

「ワン!」

ひときわ甲高い犬の声は、嫌だとでも言っているのだろうか。

「せっかく、小早川と話す口実を見つけたんだ。
邪魔をするな」

「ワン!」

……って。
それはいったい、なんの話ですか?
え、もしかしてわざわざ私と話したいがために、理由を探してきたの?
なぜにそんなことを?

「とにかく、おとなしくしていろ。
わかったな?」
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