濃厚接触、したい
バタンとドアの閉まる音と共に、課長が私の前に戻ってくる。

「すまなかったな」

「ああ、いえ。
別に」

犬との会話といつもの袴田課長とのギャップが……なんて喜んでいられないほど、動揺していた。
私はもしかして、聞いてはいけないことを聞いてしまったのでは?
そんな気がしてならない。

その後、仕事の話はつつがなく終わった。
さっきまでの話は聞かなかったことにした方がいいんだろうか、それとも正直に聞いてしまったと告白した方が?

「助かった。
ありがとう」

「いえ……」

ぐるぐる悩んでいるうちに会話は終わりを迎える。
課長もワンちゃんが待っているし、早く終わらせてしまった方がいいだろう。

「カメラ、直しておけよ。
設定がわからないならシステム事業部に……いや、俺が説明してやるし」
< 9 / 14 >

この作品をシェア

pagetop