ロストラブレター
私が手紙を確認し終えた後、お互い無言の時間が続いた。私は何と言って切り出せば良いか分からず、視線を落としている手紙から顔を上げる事ができなかった。

何分程たった後だろう、「…なんで」と声を出したのは私では無く遥がだった。
その声に反応するように、私は顔を上げ遥を見やる。
遥はいつも通り、読めない表情でテーブルに視線を落としていた。

「なんで、先輩の事、好きになったの?」
問いかけに、私は数回瞬きをして「あれ?手紙に書いてあったでしょ?」と小首を傾げた。遥は小さく頷くと「でも」と言葉を紡ぎ「声かけて親切にしてもらっただけで、人を好きになれるのか、よく分からない。それなら、他の人でも…」
そこまで言うと、遥は口をつぐんだ。
最後の方は消えるような声で聞こえなかったが、『他の人でもいいんじゃないか』と言いたかったのだろう。

遥と恋話をする日が来るとは思っていなかったので、意外な展開には驚いた。
だが、遥もいつかは人を好きになるはず…。
そんな未来を思うと微笑ましくなり、私は笑みを作った。

「そうだねぇ」膝の上に頬杖をついて呟く。「でも、誰かが言ったみたいに恋って理屈じゃないでしょ?先輩だから、心が動いたんだもん。多分、あの時声かけてもらってなくても、学校で出会ったら好きになってたと思うなぁ…」
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