ロストラブレター
「で?聞きたいことって?」
リビングについて、ソファに座る私の前に麦茶が差し出される。
「あ、ありがと」私が両手でコップを受け取ると、遥も隣に腰を下ろした。
コップの中で氷がカラン、と音を立てているのを見て、律儀に氷まで入れてくれているのは遥らしいな、とぼんやり思う。

「その、手紙なんだけど」二人だけのはずなのに、何故か声を抑えてしまう。そのせいか、私が何を言ったのか聞き取れなかったようで、「ん?」と遥が顔を寄せてきた。その時、羨ましいくらいに指通りが良さそうなさらさらとした髪の毛が、僅かに頬を掠る。

「手紙、私先輩の下駄箱に入れたはずなんだけど、、、どうして遥が持ってるの」
すぐ横に遥を感じながら、目を合わせる事はできず麦茶の水面に視線を落とす。
私の心の中とは違い、その水面は少しも波打たない。
その答えが想像つくような、つかないような、もやもやが渦巻いていてそれと同時にとても怖い。
「あー…それは」遥の気配が少し遠くなったのを感じ、きっと体を起こしたのだと思ったが、視線をそらす事はできなかった。心の準備をするように、唾を飲み込む。
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