ロストラブレター
「…先輩が落としたんだよね」そう抑揚のない声で発せられた言葉の意味は、すぐに理解することができた。そして、私は無意識のうちに遥に顔を向けていた。「落とし…た?」遥の言葉を復唱し、瞬きを繰り返す。遥は小さく頷くと更に続けた。
「今日帰る時に拾ったんだ。先輩が鞄から何か取り出した拍子に落としたらしくて…。すぐに声かけようと思ったんだけどもう先輩バスに乗るところだったし」
「どうして、中身見たの?」遥が話し終えた後、間髪を入れずに鋭い口調で私は問い質した。先輩が落としたと分かっていて中身を見るなんて…遥らしくない。そう思ったからだ。
きっと、遥ならたとえ好奇心であっても人の物を勝手に見る事なんてしない。
幼馴染という贔屓目を持ってなくてしても、常識があって、同い年の男子よりずっと大人だと思っていた。
「先輩が落としたって分かってるなら、中身見ないで次の日とかに渡せば良かったのに。遥ならそうすると思ってた」
そこまで言ったところで、急激に顔へ熱が集まっていくのが分かった。自分の恥ずかしい部分を見られてしまったせいか、ほとんど八ツ当たりだ。実際、見られた事はさそど気にしていないし、むしろ拾ってくれたのが遥で良かったと思う。ただ、遥だからこそ今まで見せたことのない、色恋に染まった自分を見られたことが耐え難いというのも事実だった。
「今日帰る時に拾ったんだ。先輩が鞄から何か取り出した拍子に落としたらしくて…。すぐに声かけようと思ったんだけどもう先輩バスに乗るところだったし」
「どうして、中身見たの?」遥が話し終えた後、間髪を入れずに鋭い口調で私は問い質した。先輩が落としたと分かっていて中身を見るなんて…遥らしくない。そう思ったからだ。
きっと、遥ならたとえ好奇心であっても人の物を勝手に見る事なんてしない。
幼馴染という贔屓目を持ってなくてしても、常識があって、同い年の男子よりずっと大人だと思っていた。
「先輩が落としたって分かってるなら、中身見ないで次の日とかに渡せば良かったのに。遥ならそうすると思ってた」
そこまで言ったところで、急激に顔へ熱が集まっていくのが分かった。自分の恥ずかしい部分を見られてしまったせいか、ほとんど八ツ当たりだ。実際、見られた事はさそど気にしていないし、むしろ拾ってくれたのが遥で良かったと思う。ただ、遥だからこそ今まで見せたことのない、色恋に染まった自分を見られたことが耐え難いというのも事実だった。