ロストラブレター
そう、私はやっぱり…
「うん、先輩が好き。想いを伝えたい」
これが1番素直な私の気持ちだ。
先輩のことを考えるだけで、自然と顔が緩む。自分自身の表情は見れなくとも、そうなる事が分かった。遥の質問への答えではあるが、気持ちを確かめるように丁寧に言葉を紡ぐ。
「一方的な片思いで先輩はきっと私のこと知らないんだ。だから、まずは知ってもらうためにも告白したいの」
今度は、しっかりと遥の目を見据える。いまだ心配そうな顔をしているが、そんな遥を安心させたくてとびきりの笑顔をつくる。
「だから、遥にも応援してもらえると、嬉しい!」
それに、きっと遥なら応援してくれる。そんな確証が自分の中にあり調子づいて顔の前でお願い、のポーズをとる。
「もし!先輩と付き合えるようなことがあったらいろいろ相談乗ってね!あ、あとふられたときは慰めて!」
と言ってからまずは告白し直さなくてはならないことを思い出す。せっかく今日は勇気を振り絞ったというのに、あの緊張をもう一度味わうのかと思うと、今から胃が痛い。
私の切実な思いが伝わったのか、遥は「…そっか。分かった」と納得したようで手首からするりと手を離した。表情も、普段通りの無愛想な遥に戻っている。
「…よかった。じゃ、また」
「うん、また」
今度こそ、挨拶を終えて私は家へ向かう。
たった十数歩の先にある自宅のドアに手をかける。ふと、何気なく遥の家の方へ振り向くと、そこには私と同じようにドアに手をかけてこちらをみている遥がいた。
まだ入ってなかったんだ。
言葉は発さず、手を振ってバイバイすると、遥もゆっくり返してくれた。
一瞬、困った表情をしているように感じたが見間違いかも知れない。
きっと、私が振られて泣いたりするんじゃと心配してくれているんだろうな。
我ながら、いい幼なじみを持ったとしみじみ思いひとり頷く。
しかし、遥の本当の気持ちも、待ち受ける真実も、この時の私はまだ知る由もなかった。