インスピレーションを信じて
務と別れた夜 仕事の後で 私は 悠香に電話をした。
『 昨夜 務と泊まっちゃった。』
私が言うと 悠香は クスッと笑って
『 礼奈 やるねぇ。』
と言った。
あまり 驚いてないから きっと予想していたのかも。
『 これで私も やっと あの夏を卒業できるよ。』
『 えっ? 礼奈達 付き合わないの? 』
悠香は 驚いた声で言う。
『 務は 付き合おうって言ってくれたよ。でも 多分 務 彼女いるよ。』
『 そんな風に 見えなかったよ。それに務君、多分 礼奈のこと 好きだと思うけど。』
『 私と務って 似ているから。何となく わかっちゃうんだよね。』
そう言って 私は 言葉を切る。
『 礼奈。』
と悠香も 言葉に詰まった。
『 結局 私と務は 縁がなかったんだね。タイミングが合わないって そういうことじゃない? 』
私は まだ 悠香にも 言えなかった。
傷付くのが 怖いから。
悠香に 予防線を張ることで
自分への 言い訳に できるから。
割り切ったふりをして。
務と うまくいかなくても 平気だって。
最初から わかっていたって 思えるように。
こんな自分は すごく イヤだけど。