インスピレーションを信じて
『ちょっと 何よ。あのライン。』
『はいは~い。』
なんて ほのぼのした声の悠香に
私は まくしたてる。
『それがさ、俊樹に会ったの。しかも会社で!』
悠香は 声をひそめて 答える。
多分 1人の部屋なのに。
『えっ。』
私は 言葉に詰まった。
” 俊樹 ” という 懐かしい名前。
あの夏が 胸をよぎって うまい返事が みつからない。
こんなことじゃ 販売員失格だなぁ…
どんな会話も 上手く切り返せないと。
『今更 会うなんて ひどいよねぇ。しかも 同じ職場って。』
悠香は ふぅっと ため息をつく。
『うん。ビビる。』
私は 務を 思い出してしまって。
やっぱり 気がきいた言葉が 浮かばない。