インスピレーションを信じて

「お父さん 入るよ。」

務は 声を掛けて 扉を開く。

私は 務の後ろで そっと深呼吸をした。


「ああ。待ってたよ。どうぞ。」

務のお義父さんは 胸に ” 牧田建設 ” と刺繍の入った 作業服を着て

デスクから立ち上がると ソファの前に 歩いて来た。


務に続て 部屋に入った私は

「はじめまして。宮内 礼奈と申します。宜しくお願い致します。」

と言って 深くお辞儀をした。


「いやぁ。綺麗なお嬢さんだ。びっくりしたね。女優さんみたいだ。」

お義父さんは 感じの良い笑顔で 私に ソファを勧める。


「失礼します。」

そう言って 務と並んで 腰を下ろして。


私が 抱いていた 勝手なイメージと 

大きく違う お義父さん。


上品で 貫禄があって 穏やかな笑顔で。


建設業の社長って 怖い系の人なのかなって。


無理やり 務に お見合いをさせるとか。

押しの強い ワンマンな社長を イメージしてた私。




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