俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~

あの件で、俺はたくさん苦しんだ。



当人である薫や兄貴だけじゃなく、親父、家柄、学園…自分自身そのものですら憎くて蔑んでいた。



でも、腹の中に真っ黒い感情をこさえながらも。

何がダメだったのか、苦しんで、悲しんで、嘆きながらも、考えて。

…そして、なずなと出会って、背中を押してもらったような気がして、吹っ切れて。



だからこそ、今の自分がある。



「…あの件があったからこそ、それを乗り越えた今の俺がいるんだ。だから…償いなんていらない」

「伶士…」

「薫…俺達は、もうそれぞれの道を歩いて前に進んでるんだ。それぞれに居場所もある。だから…」



…今の俺には、かけがえのない大切な居場所が出来た。

大好きなサッカーに打ち込めて、腹の底から笑い合える仲間がいる。



そして…一緒にいたいと思える人もいる。



だから、もう…。



「…過去をやり直す必要なんて、ないんだ」



昔みたいには、戻れない。

…いや、戻らない。



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