俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
もっと、強くなりたい。
身も心も。
正拳の乱打を防御しながら、高瀬さんの動きを見て、ほんの少しの隙を待つ。
自分のタイミングでその隙を感じ、一気に反撃に出た。
(…ここだ!)
潜り抜けての突き、距離を見計らっての上段蹴り。
踵は、高瀬さんのヘッドギアを擦る。
あ…。
「あっぶね…」
俺の上段蹴りをスレスレで回避した高瀬さんは、そのまま固まっていた。
やば…。
「す、すみません…」
まだまだ修行が足りません。
「おまえ、サッカー辞めて空手一本に絞ったら、絶対良い選手になれると思うんだけどな」
暫しの休憩。
高瀬さんと並んで座り、水を飲みながら、ちびっこの稽古を見る。
「そう…ですか?」
「おお。毎日稽古来てりゃ高校生で黒帯も夢じゃねえぞ。伶士なら」
ホント?
あの高瀬さんにそう言われるの、すごい嬉しいんだけど…!
サッカー以外のことで、そんな将来有望なるお褒めの言葉を頂戴したことがない。
感動でジーンとしてしまう。