俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「…なず!結界張れ!…先手取られる前に!」
「…わかった!」
なずなは、複雑に指を絡めて印を結び、カタカナの呪文、真言詠唱を始める。
「ナウマクサンマンダポダナン・ギャナウ・サンラ・サンラ・ソワカ…」
真言詠唱を続けていると、なずなの目の前に透明の球体が風をたてて現れた。
くるくると回る球体は、ピンクの光をほんのりと発していて、どんどんと大きくなっていく。
共に強い耳鳴りがして、思わず片耳を押さえてしまった。
この幻想的な光景は、前にも見たことがある。
家で、敵さんとバトルを始める時に作った結界だ。
「一般人二人も結界に入れたのか」
「相手は魔族。万が一があるから」
「へぇー」
なずなの作った結界の中に閉じ込められるという形になった魔族だが、その事に動じる様子はなく。
薄ら笑いを浮かべる。
《クックッ…人が悋気の炎を絶やさぬから、私はこの世界でも人の形を保つことが出来るのだけどな…?》