俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
《アァアああアァアぁァアーッ!!》
《妖気が混じった自分の翼を、無理矢理死霊の体内に入れて妖化させるなんて…妖怪も相当苦しかったはずだ》
藻掻き、苦しみ。
一心不乱となってのたうち回る…妖怪。
思い出すと、胸が痛む。
あの…鹿畑倫子さんの時と、同じく。
あの黒い羽根を…口から?
体内に入っていた…?
何で…何でここで?
「は?…『黒翼』?何でこいつがそれをゲロ…」
「…夏輝くん、退がって!」
気が付くと、なずなは竜堂の前に飛び出していた。
そして、竜堂を背に庇い、次々と黒い羽根を大量嘔吐して苦しむ魔族を前に、指を複雑に絡めて印を結ぶ。
「なず!これはいったいどういうことなんだ!」
「退魔調伏も抹消もダメだ!黒翼に反応して逃げられる!…『紫の門』を開けて、魔界に強制送還する!」
「は、はぁ?!何だって?!」
強制送還…ビザ無しなのですか?
…だなんて、ボケは通用しない。
「謹請し奉る!…禍者立ち還る世界への道を導き、禍界の紫なる門を開き給え!急急如律令、『開門』!」