俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
すると、苦しみ藻掻く魔族の頭上に、紫色のモヤがフワッと煙をたてて静かに出現する。
ぐるぐると蠢いているそのモヤは、どんどん大きくなっていく。
そして、なずなは再び印を結ぶ。
「ナウマク・サンマンダ・ポダナン…ギャキ・サラバビギナン・ソワカ!」
印を結んだ手を魔族に向けて振り払う。
ドンッ!と空気が波打って衝撃波が魔族に命中する。
《あああぁぁぁっ!》
耳障りな悲鳴が響く中、なずなは再び印を結んだ。
今の衝撃波で風が起き、黒い羽根がフワッと舞っている。
「…禍者よ、いざ立ち還れ元の住処へ…」
そう口にすると、魔族頭上の紫のモヤがグッと音をたて、急激に大きくなる。
中央がガバッと開いて『穴』となり、急ぐように蠢くスピードが速くなった。
それを感じたのか、魔族は頭上を見て慌て出す。
嘔吐した黒い羽根を口元に残しながらも。
《なっ!…や、やめろ!還らぬ!…魔界には還らぬぞ!人間を…人間を喰らわぬして魔界に還れるか!誘われて来たというに…!》
「…形無き弓よ、千早ぶる神の神弓、放つ生矢よ、魔力を的と為せ…!」
《…ああぁぁっ!》