俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「おい…どうなってんだよ…」
「………」
麗しの美声が室内に響く。
そんな竜堂に問い掛けられるなずなだが、何も答えずに、床に散らばった黒い羽根を視界に入れたまま立ち尽くしていた。
「リグ・ヴェーダ、こっちに戻ってきてるのか…」
「………」
少しの間を置いて。
なずなは無言で頷く。
その反応に、竜堂は「はあぁぁ…」と、ため息を深くついた。
「何で黙ってたんだよ…相変わらず水くせえな?音宮陰陽事務所」
「…ごめん」
「何で言わねえかな。俺達は仲間だろが」
再度、深くため息をつく竜堂と。
無言で立ち尽くすなずな。
少し離れたところから、その光景を見守る形となっていたが。
俺の胸の中では、不安と疑問が過る。
『黒翼』リグ・ヴェーダ…。
…あの人、だよな?
鹿畑倫子さんの件の、実際の首謀者であり。
俺の夢の中に出てきた、不健康そうな男。
菩提さん曰く、厨二病ヤロー。
彼の背中から生えた、大きく黒光りした翼と、舞い散る黒い羽根を…今でも覚えている。
彼はいったい、何者なのか?
この件と、なずな達と…どのような関係があるのか?
何の事情も知らない俺の前に、降りかかってきた疑問に。
不安を覚えることしかなかった。