俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~

「い、いや、い、いいって…」

「いい?…ほら、もうここまで持ってきてんだから、あーんして!」

チョコを持つ手の向こうには、ニヤニヤと悪そうな笑みが。

こいつ、確信犯か!

「こ、こんなとこで…!」

「グダグダしてんな、ほら!」

顔とチョコを更にグッと近付けられて、迫られる。

随分と強引だ。グダグダ…。

「ち、ちょっ…」

「ほら!」

勢いに押されて何だかんだ口を開けてしまう。

チョコがポンと口の中に入ってきた。



「ほーら。うまーだろ?」

「………」



何もコメントせずに、口の中に入ってきたものをモグモグと咀嚼して、たどたどしく頷く。

確かにうまーですよ。



けど…。



言葉も出せずに、モグモグと口の中を動かし続ける。

ナッツをガリガリと咀嚼しながら。

頭が真っ白になりかけ、俯いてしまった。



(………)



思考が…止まる。



なずなの顔が近付いてきた時。

思わず、薄赤のティントがついたその唇に目がいってしまった。



唇に…。



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