俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「身内じゃないんだから、墓参りはそう頻繁でなくていいよ。ミクさんは、ここが思い入れのある場所だから、引き寄せられて出てきたんだし。大好きなママに気付いてもらえたんだから、それで十分だって」
あわあわと興奮し続けているママを、なずなは気さくに宥める。
「それに…」
なずなはそう呟いて、席を立つ。
店内のフロアをジロジロと見回していた。
数歩足を進めて、角に手を触れたり。
天井をじっと見つめたと思えば、床に片膝をついて、手を当てる。
「………」
やがて沈黙となり、店内はシーンとなった。
何をしてるのやら…この沈黙ぶり、ひょっとして霊視とやらをしてるのか?
助手とはいえ、ここは黙って見守るしかない。
「…あっ」
なずなは声をあげて、移動し始める。
足を止めて再びしゃがんだ場所とは…入り口のドア。
「…大丈夫。どうやらミクさんのせいではなさそうだ」
なずなが手で触れた部分。
そこには、木製のドアを大きく削る、傷…。
カッターで付けた傷、というよりかは、彫刻刀でスパッとえぐったような傷だ。
切り口がキレイで、少々深い。