俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
兄貴の隣には、薫がいた。
兄貴に腰を抱かれ、寄り添って歩いていく。
薫は友達に手を振りながら、兄貴と一緒に正面玄関に横付けされた迎えの車に乗り込んでいた。
…あの送迎車、親父の会社のだ。
兄貴は忠晴に送迎をあまり頼まない。
夜遅くまで遊んでいる時はタクシーを使うし、忠晴に小言を言われるのが嫌なんだと思う。
車に乗り込んでいった二人。
ドアが閉まったとたんに、二人はキスをしていた。
その光景を遠くから見ていた俺は、胸が痛い。
まるで、刃物で八つ裂きにされたかのように。
(何で…)
何でこんなことになってるんだ。
それは、後悔なのか、悲哀なのか、憎しみなのか。
握る拳は、カタカタと震える。
『…伶士、何をしてるのですか』
『わっ!…ま、舞絵っ』
俺の背後には、いつの間にか長年の付き合いの友人がいた。
舞絵はこっちを不振そうに見ている。
『…何であなたがコソコソと隠れなくてはならないのですか』
『べ、別に…』
俺の様子も、兄貴たちのことも見てたのか。
黙って見てるとか、どういうつもりなのかこっちが聞きたい。
みんなして俺をバカにして…。