俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「…その夢を語りながら、あの子は必死に親父や兄弟子の背中を追いかけてきた。修行のためとか言い、小さいながらも親元離れてさ?」
それは、かつてのなずなの話だろうか。
懐かしむ内容物だが、醸し出されている空気は、決して笑い話をする雰囲気じゃない。
マジな話だ、これは。
そう感じ取ると、息をのんでしまう。
「自分で言い出したことなんだ。…小学校低学年なんて、しかも女の子。親の傍でたくさん甘えていたい時期だというのに」
「………」
それは、俺もすごいと思ったよ。
僅か七歳の子供が、親から離れて山籠りすることを決めるだなんて。
その強靭なメンタル、只者じゃないことがわかる。
「…だけどさ?修行から戻ってきたら、両親は離婚していて、母親は姿を消していた。…まあ、これは父親が悪い。なずなという一人娘がいなくなった母親の悲しみを父親が埋める努力をしなかったのだから。仕事、仕事ばかりで」
ホント、どうしようもない男だよ…と、ママは煙草の煙を深く吐き出す。苦虫を潰す顔をしながら。
ずっと小さな頃から、なずなを、なずなの家族を見てきたのだろうか。