俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
…そりゃあ、対妖怪だと無理だよ。
俺には何の術も持ってないからな。
でも、だからと言って、当たり前にちゃっかりと気軽に「助けてくれ!」と言っていた自分が、今となっては何とも腹立たしい。
なずなは、いろんな痛みを抱えてそれでも強気で、自分を省みずに。
目の前の人を、物を護るのに必死なのに。
俺だって、そんなことはわかってる。
けど…。
《全てを…護り通します》
なずなを好きだ好きだと言っておきながら。
男の風上にもおけず、その言葉に甘えまくっていた、そんな自分が…許されない!
(ちっ…)
自分に苛立ちを覚えると、アドレナリンがビシバシ出てくるのか、ますます強気の攻撃的になる。
…正当防衛はもういい。今度はこっちから仕掛ける。
そこにいる中肉中背のスーツ男に目を向けると、早速拳を振り上げて向かってきた。
しかし、攻撃させる間を与えず、太腿の裏を蹴り上げると、ひっくり返って背中から地に落ちる。
ヤル気あんのか!
『追い掛けて、その上を行く』
…それは、間違いだ。
背中を追い掛けてばかりじゃ、話にならない。
正解は…こうして、『ヤツの前に出る』なんだよ!
走り込んで、背中に庇え。
…護るように。