俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「………」
なずなは、依然として沙羅先輩の方に目を向けて、黙っている。
こっちの騒ぎには目もくれず、考え事をしているようだが。
ここでのノーリアクションは助かりますよ、はい…。
だが、安心してはいけない。
「どうしたの?伶士…早くおいで?」
沙羅先輩、今度は俺を容赦なく誘ってくる。
ダメダメダメダメ。
そっちを見ないように、聞いてないフリをする。
だが、沙羅先輩はしつこい。
「伶士、おいで?…前みたいに愛し合いましょう?」
…何っ!
前みたいにって…。
そこで、何気にペロッと…!
バツの悪い思いを抱えながらも、カッとなって思わず振り向いてしまう。
すると、沙羅先輩はあの妖精のような笑顔を向けてきた。
「え?お兄さん、あれと知り合いどころか不義の関係でやんすか?」
「……」
やんすマルコメ、うるさいぞ…!
しかし、そんな坊主でもないのにマルコメというネーミングのヤローを構っている場合ではない。
沙羅先輩の視線に捉えられてしまった。
罠にかけられた獲物のように。