俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
(うっ…)
沙羅先輩が笑い掛けてくる。
その円らで潤んでいる瞳を見ていると、神経が侵されたかのように、動けなくなってしまう。
それはまるで、本能のように。
「…伶士、大きくなったね?」
「は…」
「なんか、男らしくなったね。大人になった」
「………」
そうか…沙羅先輩の卒業以来だから、もう三年も経つ。
沙羅先輩は全然変わってないけど…。
「…そうだ。伶士、北桜辞めたんですってね?」
「…え?何でそれを?」
沙羅先輩は、もう一回フフッと笑う。
「伶士は、純粋で素直で繊細だものね。敏感に学園の『闇』を感じ取ったのでしょう…?」
「や…み?」
「まあ、それは私達のせいでもあるのだけどね…」
何だ…?
話の解釈が出来ず、ただ立ち尽くしていると、「まあいいわ」と沙羅先輩がベッドから降り立つ。
とたんに魔法陣がビリビリッと音を立てた。
しかし、沙羅先輩はそれに動じることなく、ベッドの傍に立ったまま、俺の方に手を差し出す。
「積もる話もあるから…伶士、おいで?」