俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
やっぱり、さすがのなずなもドン引きするか。
「…でも、もうお迎えが来るんですね?」
しかし、ドン引きされているとは知らず、沙羅先輩はそんななずなにも笑顔を向ける。
何を考えているのかわからなくさせる、その妖精のような笑顔を。
「お迎え…」
「私を必要としている殿方が、いらっしゃるんでしょう?」
「………」
何の疑いもなく、そう述べる沙羅先輩に。
なずなは言葉のひとつも出せず、固まっている。
それを傍で耳にした俺達だって、絶句するしかない。
まさか、これから魔族という異世界生物に連れていかれて、食べられる…死を迎えるなんて。
誰もそんな事は言えない。
そんな中、なずなの口からポツリと言葉が出てくる。
「母さんは…?」
「…え?」
「あんたの実の母さん…あんたが今何をしてるか、知ってんの?」
…何故、なずながそんな事を急に問い出すのか、わからなかった。
掛ける言葉が見つからないから、ただ言ってみただけなのかもしれないけど。
恐らく。
この世に未練はないのか。
確かめようとしてるんだと、思う。