俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「………」
しかし、なずなは何の返答もせず、ただ立ち尽くしている。
聞こえてはいるんだろうけど…。
故意に返答しないのか、それとも返答できないぐらいの精神ダメージなんだろうか。
「とんだ茶番劇だよ」
「あ、ボス」
その後ろから現れたのは、菩提さんだった。
先ほどのダークなお声に、ピリッとした雰囲気を添えて。
「『魔族とは交渉するな』…やり過ごすか、絶対調伏かのどちらか。そう教えたの、忘れた?」
なずなの体がピクッと反応した。
顔を見せず俯いたまま、ふるふると首を横に振っている。
「…ましてや、人間術者でも特徴と名を把握してるほどの強さの魔族…魔界No.2に立ち向かえるとでも、思った?それとも…」
そして、菩提さんの顔が険しくなった。
「…おまえは甘いんだよ!」
張り上げた声に、何故か隣にいる俺もビクッとビビる。
普段穏やかな人が怒ると恐い。
…いや、なずなの前では違うか。
「…あの女をどうしようと思ったんだ?もしかして、取り返して助けようとでも考えたか?」
すると、そこでようやくなずながバッと顔を上げる。