俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~

「………」



しかし、なずなは何の返答もせず、ただ立ち尽くしている。



聞こえてはいるんだろうけど…。

故意に返答しないのか、それとも返答できないぐらいの精神ダメージなんだろうか。



「とんだ茶番劇だよ」

「あ、ボス」



その後ろから現れたのは、菩提さんだった。

先ほどのダークなお声に、ピリッとした雰囲気を添えて。



「『魔族とは交渉するな』…やり過ごすか、絶対調伏かのどちらか。そう教えたの、忘れた?」



なずなの体がピクッと反応した。

顔を見せず俯いたまま、ふるふると首を横に振っている。



「…ましてや、人間術者でも特徴と名を把握してるほどの強さの魔族…魔界No.2に立ち向かえるとでも、思った?それとも…」



そして、菩提さんの顔が険しくなった。



「…おまえは甘いんだよ!」



張り上げた声に、何故か隣にいる俺もビクッとビビる。

普段穏やかな人が怒ると恐い。

…いや、なずなの前では違うか。



「…あの女をどうしようと思ったんだ?もしかして、取り返して助けようとでも考えたか?」



すると、そこでようやくなずながバッと顔を上げる。



< 475 / 503 >

この作品をシェア

pagetop