俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「…ここは?」
そう呟いて、車の窓越しに周りの景色を見回すが…すぐに察してしまったのは言うまでもない。
え…ここ。
辺りにはビルが立ち並んでいるが。
電飾が灯された看板には『ソープランド』の文字が…。
振り返ると、そこにも『ソープ』、あそこにも『ソープ』、お風呂屋さんだらけ…!
ここ…風俗街?!
(…えぇっ!)
高校生にとっては未知と禁断の領域にいることに、急に罪悪感でいっぱいになり、ソワソワと挙動不審となる。
な、何でこんなとこに?!
「そろそろ時間かな…」
車に内蔵された時計を見つめて、菩提さんは呟いた。
「…伶士くん」
「は、はい」
「今から何があっても、車から出てきたり顔を出したりしないでね」
「え?」
「車の中から、黙って見てて」
「あ、はい…」
それだけを俺に告げて、菩提さんは車を出る。
窓が少しだけ開いたドアをバタンと閉めて。
いったい何が始まるんだ?
そんなこと言われても、こんな禁断の地に降り立つつもりはまったくないけれど。
寒いし。
そんな菩提さんは、車のすぐ傍で煙草を吹かしている。