俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
しかし、菩提さんは、躊躇うことなく自分の身の上話をしてくれる。
「母親は14歳で俺を生んだらしい。網走のヤンキーで、若気の至りで出来た子供らしくて。俺、公園の公衆便所で生まれて、すぐに施設に引き取られたんだって」
「え…そうなんですか」
「で、八歳の時、ちょっと事件に巻き込まれて…そこでなずなの父親と出会った」
そして、フッと笑っている。
昔を懐かしむような、笑顔。
「…あの人みたいな陰陽師になりたいって思ったんだ。…で、無理矢理札幌まで着いていって、あの人の家に居候したんだ。妊娠中のお腹の大きい妻がいたけど」
「…凄い行動力ですね」
「それからすぐに、陰陽師の総本山に入って12歳まで修行。卒業してからまたこっちに戻ってきて本格的に弟子入りしたんだ」
「またまた凄い行動力ですね」
「ふふっ。あの時は死に物狂いだったよ」
(………)
菩提さん…今。
不幸な生い立ちを話していたはずなのに。
「あの時は…幸せだったな」
『幸せだった』と過去形のはずなんだけど。
今も幸せそうに見えるのは、なぜか。
彼をボーッと見ていると、目が合う。
あっ…。