俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
その様子から目を離さないまま、両手で印を結ぶ。

右手の中指と人差し指を伸ばし、親指でほかの指の爪を隠すように。

まるで、右手で造った刀を、左手で造った鞘(さや)に収めているかのようだ。



そして、刀に見立てたその指を鞘から抜くように、素早く鋭く。

空を、斬る。




「…臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前…」



縦横、交互に空を切り刻んでいく。

なずなの目の前には…格子状に絡められた黄金の線が浮かび上がる。



「…衝!」



指を組み換えて、新たな印を造り。

目の前の格子を押し出すように、印を組んだ指を前に突き出す。

その格子は、竜巻と靄を巻き込んで衝撃音と共に光を放った。

ここ一番のギャラリーの歓声が響く。




すると、その黒い竜巻は徐々に小さくなっていく。

鏡に吸い込まれるように、消えた。



「…オン・カカ・カビ・サンマ・エイ・ソワカ…」



空気の震えも止まり、辺りはシーンとなった。


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