俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
「…あ、そうだ。伶士」
「はっ!は、はい!」
俺を呼んだ時はすでに、いつもの余裕の笑みを浮かべる兄貴の表情に戻っている。
その早変わりに戸惑いを隠せず、返事の声が裏返ってしまった。
驚かされてばかり。
予期せぬ再会にも、兄貴にも。
…だが、これで安心してはいけない。
「伶士にお客様。話したいって言ってる人がいるよ」
「…は?俺に?」
誰。そんなヤツ、まだいるのか?
まさか、また舞絵じゃねえだろな。
…もし、神様ってやつがいるなら、相当イタズラ好きに違いない。
俺を予期せぬ客ばかりで、驚かせまくる。
「ほら、あそこにいるよ」
「は…」
兄貴が指で示した方向には。
少し離れた場所から、こっちに視線も体も向けて一人、佇んでいる女性が。
(は…?)
そのモスグリーンのワンピースと黒いストールを身に纏った女性は、俺と目が合うと、浅く頭を下げる。
黒髪のストレートロングヘアがサラッと揺れていた。