俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~
…薫とは、あの件があってからまともに話をしていない。
同じ教室にいても、お互いその存在は見えないかのように。
最初は、ちゃんと話し合わないととは思っていたけど…兄貴と堂々とイチャつきながら歩いている姿を何度も目撃したり、校内での二人の噂が激化しているのを知ったら、もうどうでもよくなった。
なのに、何で今さら…。
もう、一年以上経ってるんだぞ?
「まあ、過去は水に流して話相手ぐらいになってあげたら?」
「…は?!」
「だって、今の伶士にはなずながいるじゃん。どうせ過去の女でしょ?」
「な、なずなとはそんなんじゃねえし!」
ホントに、どの口がそれを言う。
何の悪びれもなく!
兄貴が、元はと言えばの当事者だろ!
「じゃ」と、肩をポンと叩かれる。
すれ違い様に「ふふっ」と、兄貴の漏れた笑い声が聞こえた。
このっ…!
しかし、振り返った時には、兄貴はすでに向こうに行ってしまい、早速若い女性に話し掛けていた。