あなたのそばにいさせて


 課長は、いつもギリギリに戻ってきて、すぐに仕事を始める。
 やっぱりカッコいいなあ……と思っていたら、目が合った。
「……何かあるか?藤枝」
「あ、あの、さっきの資料のやり直しを送りましたので」
「ああ、わかった」
 マウスを動かしている。どうやらすぐに見てくれるらしい。
 私は課長のデスクの前に立った。
 近くで見ると、ますますカッコいい。
 眼福だなあ、と思っていると、切れ長の目が私に向いた。ドキッとする。
「戻っていいぞ。先方に送っておく」
 やった、OK出た。
「ありがとうございます!」
「お疲れ。次のもよろしく」
「はい!」

 自分でもわかるくらい、にこにこしてしまう。
 課長は、厳しいけど、できた時にはちゃんと認めてくれる。
 外見だけじゃなくて、こういうところも憧れ要素の一つだ。

 席に戻って、次の仕事を始めようとしていたら、小山田さんがニヤニヤしていた。
「遥ちゃん、にっこにこね」
「えへへ〜、仕事頑張ります〜」
 我ながら単純だと思うけど。
 仕方ない。課長はカッコいいんだから。
 外出していく課長の後姿にしばし見惚れて、その余韻にひたりながら、幸せ気分で仕事を進めた。



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