千景くんは魔法使い
千景くんの✫*゚☆.*。✫ほんね
次の日。学校に着くと、千景くんは机に顔を伏せて寝ていた。
それは朝だけではなく、一時間目の授業が始まっても同じで、先生が「起きなさい」と体を揺すっても千景くんは無視していた。
「小野寺、機嫌悪いね」
いつもなら桃ちゃんが私の席に来てくれるけれど、今日は私が彼女の席へと行った。
千景くんファンの子たちも安易に声をかけられないほど、千景くんのまとう空気がピリついている。
「花奈にもおはようすら言わないなんて変じゃない?」
桃ちゃんは机に頬杖をついて、冷静に分析しようとしていた。
きっとなにもなかったら私もどうしたんだろうと、心配していたと思う。
けれど、私には千景くんの不機嫌な理由に思い当たることがある……。
「もしかして、花奈が原因?」
桃ちゃんに私の困った顔を悟られてしまった。私は周りに聞こえないように、桃ちゃんに顔を近づける。
「……た、たぶん、私が千景くんの昔の友達と話したことが悪かったんだと思うんだけど……」
「花奈もその人と友達だったの?」
「ううん、私は千景くんを通して知り合っただけ。それでたまたま会って、少しだけふたりで話したんだ」
真田くんと話す内容なんて、千景くんのことに決まってるし。
きっと自分の知らないところで、千景くんの話をしたことに怒ってしまったんだろうと、私は考えていた。