千景くんは魔法使い


千景くんは宣言どおり、この9月からまたサッカーをやり始めた。

部活に入ることも再度考えたようだけど、悩んだ末に千景くんは地域のサッカーチームへと入った。

そこにはジュニアチーム時代に一緒だったチームメイトも何人か所属してるようで、しっかりと謝罪して、その人たちからも許してもらえたようだ。


「最近、真田くんはどう?」

「向こうも知り合いの通してチームに入ったみたい。まあ、頭はすでに高校のことでいっぱいみたいで、スポーツ推薦を狙っていくって言ってたよ」


本当にいろいろなことがあったけれど、真田くんと千景くんはお互いの近況報告も含めて連絡を取り合っている。

たまに一緒に練習をしたりもするそうで、ふたりが仲良くしていると私も嬉しい気持ちになる。


千景くんは前に進んだ。

じゃあ、私はどうだろうか?


「……高校か、私は全然考えてないよ」

明確な目標が決まった千景くんとは違い、私はまだ将来についてはぼんやりとしてる。


学校でも受験の話はちらほらと増えていて、高校説明会のパンフレットもたくさん置かれるようになった。

すでに志望校をいくつか絞っている人もいるようだけれど、私はまだどこか遠い話のように感じていた。

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