千景くんは魔法使い
「花奈も俺と同じ高校にすれば」
「……え?」
「学力は平均より高めらしいけど、校則はそんなに厳しくないみたいだよ。俺は高校も花奈と一緒だったらいいなって、ひそかに思ってるんだけど?」
千景くんと同じ高校……?
たしかに、千景くんが進もうとしてる高校の学力は少し高い。勉強が苦手な私ではちょっと危ないほどに。
でも、目指す場所が曖昧でふわふわしていた時とは違い、なんだか今は体の中からやる気が湧いてくる。
私も千景くんと同じ高校に進みたい。
そのためには真面目に受験勉強に取り組まないといけないけれど大丈夫。
だって、頑張ることなら誰よりも得意だから。
「……い、行く!絶対に、千景くんと同じ高校に合格するから!」
どうやら自分が思っていた以上に思考が単純だったようで、すぐに目標が決まった。
ああ、なんか今からワクワクしてきた!
さっそく桃ちゃんに報告しようと顔をゆるめていると、視界に奇妙な人を発見した。
「……うるせ、わかってるよ。いちいち話しかけんな」
学ランを着た男の子が苛立ったように喋っている。その話し相手は……なんと、彼の周りをバサバサと飛び回っているカラスだった。