千景くんは魔法使い
孤独は自分ひとりでは埋められない。
立ち止まってしまった足もまた、誰かに背中を押してもらうことで、少しずつ前に進めるようになる。
私も千景くんに出逢って、それを知った。
だから、迷ってる人がいるのなら、私たちのように知ってほしい。
この世界には、自分のことを好きだと言ってくれる人がいる。
それで、自分のことも好きになれる日が必ず訪れる。
誰だって、かけがえのない人に出逢える瞬間が、きっと必ずあるはずだから。
「行こう、花奈」
「うん!」
私と千景くんは、固く手を握り合う。
足並みを揃えて歩く足。その一歩は、明るい未来へと続いているのだろう。
魔法使いの千景くんはもういない。
けれど、私はこの先も、ずっとずっと――
恋という千景くんの魔法にかけられていく。