千景くんは魔法使い
「ねえ、そういえばさ、うちのクラスの男子が花奈のこと可愛いって言ってたよ」
「えー聞き間違いじゃないの?」
桃ちゃんは高校生になって、よりいっそう綺麗になったけれど、私はとくに変化していない。
身長も全然伸びないし、前髪を切りすぎてから余計に幼さが増して小学生みたいだし、私も桃ちゃんのように大人っぽくなりたいのに……。
「もう、花奈はちっとも自分のことがわかってない!花奈はおっちょこちょいで抜けてるところもあるけど、そういうところも放っておけないし。なにより顔!言っとくけど、花奈の顔面は普通に可愛いからね?そろそろ自覚してくださいよ」
桃ちゃんは呆れながらため息をついていた。
桃ちゃんはまるでお姉さんのような存在でもあり、なんでも話せるし、なんでも言ってくれるし、本当に心許せる大切な人だ。
「花奈に自覚なんてさせなくていいから」
背後で低い声がして振り向く。
「うわ、千景くん」
千景くんは部活に行くためにジャージを着ていた。