千景くんは魔法使い


もちろん私が進んだ高校は千景くんと同じ学校だ。受験勉強は思いの(ほか)大変で、知恵熱が出るほど煮詰まることもあったけれど、千景くんに教えてもらいながら、なんとか合格することができたのだ。

「帰り道、気を付けてね。変な人に付いていったらダメだよ」

「はは、うん。大丈夫だよ」

千景くんは相変わらず優しい。

16歳になった千景くんはますます身長が伸びて、体つきも大きくなった。

サッカーをやるために髪の毛も短くして、爽やかなスポーツ少年の雰囲気を漂わせている。

一番近い存在にいても、その完璧すぎるほどのイケメンさに、いつも胸がきゅんっとなっている。


「私がボディーガードとして一緒に帰るから平気だし」

桃ちゃんがぎゅっと私の腕を組む。

「でもそのまま花奈の家に上がり込むなよ。この前だって平日なのに泊まっていっただろ」

「いいじゃん別に!っていうか小野寺は花奈を独り占めしすぎだから。花奈は私の花奈でもあるんだからね!」 

「いや、俺のだから」

「ふ、ふたりとも嬉しいけど、喧嘩しないで……」

私は喜んでいいのか困っていいのかわからずに、あたふたとしていた。

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