千景くんは魔法使い
ふたりが口喧嘩をしてる中で、同級生の女子たちが私たちの後ろを通りすぎた。
「ねえ、あそこに千景くんいるじゃん。私、めちゃくちゃタイプなんだよね!」
「あ、でも彼女も一緒じゃん。中学から付き合ってるらしいよ。マジで羨ましいー」
中学同様に千景くんのことを女の子たちが放っておくはずもなく、高校でも千景くんはモテている。
それはもう、同級生に限らず色っぽい先輩たちからもよく声をかけられている。
今ではひそかにファンクラブがあったり、他校の生徒にも追いかけられたりと、千景くん人気はおさまることを知らない。
まあ、本人はとても困っているというか……たまに熱狂的な人がいたりすると先生に相談してることもあるけれど。
もちろん彼女である私に対して、風あたりが強い時もある。
でも嫌がらせなどをされないのは、千景くんが絶対にそういうことを許さない人だから。
自分はなにされてもいいけど、花奈がなにかされたら怒るっていつも言ってくれてるし、優しいだけじゃなくて、千景くんは強くて頼もしい男の子にもなっている。
今でもそんな素敵な人が私の彼氏だなんて信じられないし、千景くんの彼女が私でいいのかなって思う時もあるけれど、前みたいに〝私なんて〟と自分を下げたように言うことはなくなった。
だって誰よりも私のことを認めて、彼女として大切に扱ってくれるのは千景くんだから。
「道の真ん中で突っ立ってると邪魔なんだけど」
「……う、」
首がズシリと重くなったと思えば、後ろから来た真田くんの腕が私の頭に乗っていた。