千景くんは魔法使い

 
「ただいまー」

家に帰って自分の部屋へと向かうと、カーテンが揺れていた。

あれ、また開いてる……?

実は最近、部屋の窓の鍵を閉めて出掛けても、こうして帰ってくると開いてることがある。

最初は換気のためにお母さんが開けてくれたのかなと思っていたけれど、聞いたら『開けてないよ』と言っていた。

部屋は荒らされていないし、とくにお金になりそうなものはないので、おそらく泥棒ではない。

と、なると犯人は……。


「ニャアア!」

なに食わぬ顔で窓から部屋に入ってきたのは、ちっちだった。

木をつたい地上から2階に登ってきたのか、それとも家々の屋根を使って戻ってきたのかは知らないけれど、ちっちが外に行っていたことは明らかだ。


「ちょっと!勝手に窓を開けて外に出たらダメだよ。事故にでも遭ったらどうするの?」

私は手を腰に当ててため息をつく。
 
ちっちが脱走するように外に出てしまうことは10回目を越えてから数えなくなった。

本当に危ないし、なにかあってからじゃ遅いから、帰ってくるたびに叱りつけているけれど……。ちっちは反省するどころかツンと反抗するようにそっぽを向いている。

ちっちもこの2年の間にずいぶんと大きくなった。

前に一年経てば17歳だなんて言っていたことがあったけれど、今のちっちを人間の年齢にすると22歳くらいだ。

もう立派な大人というかお兄さんで、最近はおやつのささみにもあまり食いつかなくなった。


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